横トリに行って「のびアニキ」を発見する

金曜日と土曜日、横浜トリエンナーレを回った。いくつか見逃したものもあるが、9割がた見れた、と思う。今回は、スッキリしてる、というのが印象。一回目の怒濤の「てんこ盛り」、前回の「参加型」&「やんちゃ」なワクワク感、に比べて。そのぶん(?)、一日経ってもう既に印象が薄れつつある。記者会見とかスルーしたのでよくわかっていないがのだが、今回のコンセプトには「パフォーマンス」という視点があるらしく、常設実演?というかようするに生のパフォーマンスを展示している作品がいくつかあり、見応えあるものだった。
まず、バンクアートNYKの勅使川原三郎。新国立でやった『ガラスの牙』のコンセプトをそのままインスタレーションにした、と。縦に細長い空間、床にはガラスの破片が敷き詰められ、さらに左右の壁からはびっしりと牙のように生えたガラス片が。その中で勅使川原が転けつまろびつ踊る!ガラスの割れる音、白い天井に乱反射する光、踊り手のスキンヘッドには幾筋もの切り傷とたった今こぼれ落ちていく鮮血が。13:00〜18:00とあるので、いつ踊るのかと思ったら、本当にずっと踊っていたらしい。偉い!ただ、今後、踊り手がいない時が当然あると思うのだが、その場合はどう見えるのだろうか。
もう一つ、三渓園の古い民家を舞台にした、ティノ・セーガルの『Kiss』という作品。これは会期中、6組の男女(ダンサー)が交代で“常時”、キス&抱擁からなる「振付」作品を踊る、というもの。黒光りのする木の柱と鴨居、白い壁と畳という空間、そして開け放された襖の先の庭を背景に、男女のカップルがくんずほぐれつしている。残暑の中、汗で長い黒髪がはりついた女の紅潮した顔が艶かしかった。既に海外で何度か上演=展示されているとのことで、もとは案外コンセプチュアルな、クールなものだったかもしれないが、このきわめて日本的な空間に置かれることで、かなり情念的というかロマネスクな、というか独特の風合いの作品になったのではないだろうか。しかし、これやるほうは大変だ。彼等がもともとカップルなのかどうかは知らないけれど(応募は「男女ペアのダンサー求む」だったようだ)、2ヶ月もの間、延々これ踊っているうちに、色々あるんじゃないのかしら(笑)。
あと、インスタレーションでよかったのは、ランドマーク・プラザの吹き抜けを使ったマイケル・エルムグリーン&インガー・ドラッグセット「落っこちたら受け止めて」というタイトルに反して、落ちたら誰も助けられないし即死確実な高さにある水泳の飛び込み台で震える少年)、バンクアートNYKの中西夏之インスタレーションというものの特質の一つ=「複合メディア性」に関してとことん考えられている作品。ここで、室伏鴻のダンスが見たい!)三渓園キャメロン・ジェイミー(真っ暗なお寺のお堂で「肝試し」。「陰影礼賛」?)、中谷芙二子(小さな渓谷を霧で覆った「雨月物語」)、といったところ。三渓園は京都や鎌倉から移築された17棟の歴史的建造物が点在する日本庭園で、他の会場と離れていて、ここに行くと戻ってくるのが時間がかかり大変なのだけど、ちょっとした遠足というか、観光な気分が満喫できるし、他と比べても作品的に充実しているので、是非。
そうそう、金曜日の3時30分からcontact Gonzo のパフォーマンスを見るつもりだったのに、三渓園に行ってしまい戻って来れなかったのだった。これ、横トリ会場の新港ピアの横の東京芸大でやってる「After Hours」という催しの一つで、新港ピアの出入り口前でゲリラで行うというもの。翌日の夕方の回には駆けつけたものの、案の定、金曜日に横トリに怒られちゃったそうで、芸大のスタジオの中に変更になってしまったそうだ。残念。でも、パフォーマンスじたいはいつもながらの面白さでした。会場前には遠藤一郎と「未来号」が。あれ!何だ、参加してたのか? パフォーマンスももう終わっちゃったって。残念。Gonzo の前には、和田昌宏というアーティストの「ケバブ車パフォーマンス」というのがあって、ケバブ屋台車が登場し、これはケバブを振るまってくれるのかな、お腹すいたしなー、と思ったら、くるくる回ってあぶられている状態のケバブの「彫刻」を作るというパフォーマンスだった。電ノコで丸太を切って、ノミで彫って、バーナーであぶって焼き目を入れて、出来上がり。そそくさと店じまいして走り去る、それだけ。という人をくったパフォーマンスでした。
ところで、金曜日の夜にNYKの外で挙動不審な男子を目撃。赤いランドセルしょって黄色いVネックのセーターに半ズボン、白ソックスが自転車で乗り付け、ちょうど降り立ってスタンドを下ろしたところ。目が合った、と次の瞬間こちらに向かって来た。のび太? ちょっとまことちゃんも入ってるかも。ランドセルに小さなモニターが装着されており、そこにはくーだらない映像が。それを見せてる間に、自分のブロマイドを取り出し、サインする。手渡されたそれには「のびアニキ」と書かれている。かなり好きかも。早速ググってアニキの公式ホームページ発見。岡本太郎賞取ってるじゃん。で、ついさっき、10月の吾妻橋DXに出演してもらう約束を取り付けた。客席内パフォーマンス、やってもらいます。というわけで、横トリに行った2日間の一番の収穫はのびアニキ、ってことで。