最近見たものメモ

7/25 KENTARO!! 『彼方から世界で1つ…』@吉祥寺シアター
ドビュッシーピアノ曲アラベスク」で踊るシーンがすばらしかった。面白いことに、曲の途中からリズム・トラックが入ってくるが、その前のほうが歴然とグルーヴィだった。リズムがないにもかかわらず、いやそうだからこそケンタロウの身体の発するリズム、グルーヴが顕在化されるという逆説。

7/26 ジル・ジョバン『Text to Speach 』@スパイラルホール
ノートPCが読み上げる「架空の、しかし世界の現実の出来事をスイスに置き換えたニュース」をパフォーマーリテラルに上書き、イラストレイトする。絵解き、紙芝居。最初の(机上の)アイデアは悪くないが、舞台作品としては×。安易すぎる。「絵に描いた餅」は喰えない。

8/3 山田せつ子・寺田みさ子『ふたり いて』(山田せつ子振付)@吉祥寺シアター
山田せつ子、復活! 前半の20分以上のわたる山田のソロは、ここ数年の「絶不調」(僕に言わせると「散漫」に「とっちらかった」「上滑り」するばかりのノンシャランさ)とは打って変わった堂々たる「大フーガ」。小さな点から始まり、線となりすこしづつ伸ばされていく、その恐ろしく息の長い旋律は、いつ途切れるかという見るものの緊張をよそに、決して途切れないばかりか、どんどん繊細にして大胆となり、知らぬ間に分岐して対位法的「綾取り」など展開しつつ、空間に伸展していくのだった。
対する寺田みさ子はというと、中盤のソロパートで、これまた与えられた「難曲」と格闘し見事に弾き倒すことに成功した。その振りは紛うことなき「山田せつ子」である。己の身体上において他者の身体のトレース(振り)を遂行しつつ、自らを「エイリアン」として「振り」を喰い破らせる。あるいはその逆。寺田みさ子と山田せつ子の熾烈な闘争であり奇妙な(寄生的)共生=デュオ。そう、この寺田みさ子のソロこそが、この「作品」における唯一の正しい意味での「デュオ」なのだ(後半、実際の身体的な絡みを伴うデュオがあるのだけれど…)。

8/9 Chim↑Pom『友情か友喰いか友倒れか/BLACK OF DEATH 』@hiromiyoshii
会期中の約3週間、メンバーの水野くんをセンター街のドブネズミ(スーパー☆ラットね)と石原慎太郎の魔の手から救出されたカラス(BLACK OF DEATH)と一緒にブロックで作った四畳半ほどの部屋に閉じ込めて、どうなるかを実験する、というヒドい(笑)展覧会。思えば、ほんの数日前の「せいこうナイト with ADX」では、恋人の円ちゃんとラブラブなパフォーマンスを披露してくれた水野くんだった。今や実験のマウスとなってしまったのね。この部屋、窓があって、と思いきや、じつは「マジックミラー」で外からは中が覗けるけど中は鏡になってるのだった。食糧はセンター街のゴミ袋(マックとかの)がセンターGUYによって毎日届けられるそうだ。あと、トイレは携帯用トイレだって。水野くんは、初日なので、まだ何も変わった様子もなくダラダラと寝っ転がっていたけど、3日後にチンポムの林君にあったので聞いたところ「かなりまいっているようです、精神的に」とのことだった。今ごろどうなってるでしょう? 
体裁は社会心理学とかの実験だけど、最終的なデータに還元することのできない部分=アートとしてどうなるのか、それを確かめたい。っていうか水野くんが心配だから何度か足を運ぶつもり。
このほか会場には、カラスを呼びよせる「BLACK OF DEATH」のビデオインスタレーションと写真展示、渋谷の街を破壊せんと欣喜雀躍する巨大「スーパー☆ラット」の図をジオラマでこさえたものが。これは、見応えがある。
隣のギャラリー「ZENSHI」ではChim↑Pomの仲間、遠藤一郎の個展「超アート展」もオープニングで、彼のパフォーマンスを見る。「アートぐらい超えて行こうぜ!」「生きてんだ俺だって!」。あまりにストレートで清々しい(痛々しいのではない)徒手空拳。ちょっと感動した。笑顔がなんとも言えない遠藤一郎。