芥川賞

芥川賞2作合計4時間で読み終わった。意外だったのは金原ひとみ蛇にピアス』のほう。エグい題材に対して頭上10センチから自分を眺めているような距離感のある淡々とした語り。「共感」は呼ばないが、「さわやかさ」はある。「譚」になっている、というか。対して、綿矢りさ蹴りたい背中』は、自意識過剰という青春の特権に対して、距離を取ろうとはしているが、もしかしたらそれは文章作法としてそうしているだけで、この主人公や「にな川」という男の子の「感受性の強さ」に対して根っこのところでは「正しい」と思っているというか、恥ずかしいとは思っていないのかもしれないという感じがする。そういう作者の立ち位置を隠すようなちょっと小賢しい書き方。オヤジとしては、例えば、ライブの後の出待ちで「にな川」はあこがれのオリちゃんに突進していくが、あれは本当なら傷害事件とかヤバい事態が起こってしまって、取りかえしがつかなくなるのでなければいけないのではないか、あるいは、主人公は唯一の仲良しにも去られて孤立無援になるべきなのではないか、と嫌味なことを思ってしまうのでした。小説で、そうならないのは、「そんな展開は本当のリアルじゃなくて週刊誌のリアルに過ぎない」という反発もあるのかもしれないが、それよりも何か自己保存な感じがするのですよ。