追悼

四世井上八千代が逝った。高齢とはいえ誠に残念、ただただ「噫」「嗚呼」とため息をつくしかない。まさに奇跡、空前絶後、唯一無二の至芸であった。
相前後してもう1人のダンサーがひっそりと亡くなっていた。リュドミラ・チェリーナ、バレエ・リュス・ド・モンテカルロの花形として活躍、プレスバーガー&パウエルの映画『赤い靴」『ホフマン物語』で知られるバレリーナだ。小学生の頃、昼のテレビの洋画劇場でみた『赤い靴』でバレエに目覚めた僕は、後年『西麻布ダンス教室』の図録にこっそりとチェリーナの写真を入れた、「アティテュード」のポーズの例として。ちなみに「アラベスク」のほうは、やはり少年時代のアイドル、レスリー・キャロン(『足ながおじさん』『巴里のアメリカ人』『恋の手ほどき』『リリー』)を起用した。嗚呼。