Direct Contact vo.1

月島のギャラリーで行われた「Direct Contact vo.1」に行く。が、後半の途中で退出(出演者のみなさん申しわけありません)。でも、面白かったです。おすすめです。明日25日までありますから。http://www.space-tc.com/event/new.htm

まず、「ダンス」と「音楽」を「美術」作品が展示されているギャラリーに「併置」という企画コンセプトを評価したい。ネットの告知ページにも、
「作りこまれた舞台と違い、その場から与えられる条件をまま活かしながら、よりダイレクトに表現者として今現在に反応していく事がパフォーマーに求められます。
現代美術やコンテンポラリーダンス、現代音楽といった、本来は多様なオーディエンスを横断してアプローチしていくはずの作品が、ギャラリー展覧会やダンス公演、ホールコンサート・ライブといったそれぞれのジャンルに重きを置いた発表の「場」に成長の可能性を縛られてはいないでしょうか。TEMPORARY CONTEMPORARYのがらんとした器が全てのものを採りこんで、新しい繋がりを生む磁場として本領を発揮します。」
とあるが、まさにそういう意味で今緊急に必要な試みと言うべきだろう。
その前提の上ではじめて、キュレーションの手腕を問うことや上演の出来を云々することも許されるということだ。
個々のアーティストのセレクションは、「今キュレーター自身が重要と考える人」を選んだのだろうし、文句なくグッド・チョイスなんだろうと思う(これまた全部見てないので恐縮だが)。木村=ダンスと音楽=大谷の両氏がどの程度連携し、お互いのコマとの対比等々を話し合ったのかはわからないが、「相性」という意味では、かなりマッチしたセレクトだったと思う。それは、他ジャンルの観客に向けてのプレゼンテーションとしては当然の戦略だ。ただ、全くの個人的な欲望を言わせてもらうなら、あえてコントラストを付けるというか、ストイックな神村恵にポップな音楽、あるいはこのストイックな音楽(ちゃんと最後まで聞いたのは大蔵正彦氏の一曲目だけなのだが)にすっとんきょうなダンサー、とか、そういうミスマッチなマッチングというのもアリだったのではないか、と。いや、これは同時上演の場合か。今日は、始まるまで同時上演=併置で行くんだとばかり勘違いしていたのだった。そこをあえて意図的に別々にしたのだとは思うが、もう一つの手として、ダンス、音、ダンス、音、と交互にシャッフルしてやるというのもアリかも、と思った。まあ、折衷案みたいだけど。
あと、神村恵のダンスについて。以下、ややネタばれかもです。今回は「ソロ+アルファ」というタイトル通り、前半にソロ、後半から一人ダンサーが増えてデュオという構成だが、察するにパフォーマー神村と作家(振付家)としての神村という両面の魅力を高度に凝縮してプレゼンテーションする(上演時間約30分)こと、さらにギャラリーでの上演ということで「美術としてのダンス(オブジェ的身体?)」を提示する試みが意図されていたと思われる。まず、今日のソロは出色の出来だったのではないか。最初のフレーズ、右に方向転換すると見せかけてガクっと下に落ちるという「不意打ち」に始まり、一挙手一投足、すべての進行にわたって予測しがたいスリリングな瞬間が持続していた。これまで神村さんのソロはある瞬間まではそのように進むのだが、必ずと言っていいくらい途中で、その驚くべき変化=持続が切れてしまい、また同じことをしてしまったり、それまでとはうってかわった凡庸な展開になってしまうのだった。今日は、前半(15分?)最後まで見事に疾駆し切った感がある。それで、後半のデュオは、どうしても見劣りがしてしまった。アイディア(自体は悪くないのだけれど)で乗り切った、というか。それは、これまでの神村さんのソロ作品と振付=カンパニー作品との間に僕が感じるギャップでもある。
それにしても、なによりも気になるのは、これを今日来ていた音楽ファンの方々がどう感じたか、だ。一番大事なのはそこでしょう。


「Direct Contact vo.1」
プロデュース:大谷能生+木村覚
4/24(木)@TEMPORARY CONTEMPORARY
神村恵「ソロ+アルファ」
出演(ダンサー)/神村恵、他
室内楽コンサート・レトロスペクティヴ 2006-2008
演奏曲目
「backup (for koto)」作曲 大蔵雅彦
「Tom & Jerry (for drums and keyboard)」作曲 杉本拓
「(曲目未定)」作曲 宇波拓
出演(音楽)/塚本真一 イトケン 水谷隆子 上江州佑布子